2013北海道マラソン
Tips for Runner

第3回
プロスポーツ選手はこうしている!

レース直前のメンタル・トレーニング

立命館大学 スポーツ健康科学部

佐久間春夫教授(スポーツ教育コース)

Q1:レース前にとても緊張してしまうのですが、緊張をほぐす良い方法はありますか?

 緊張とパフォーマンスとの関係は逆U字曲線で表されるように、ある程度の緊張は必要ですが、もちろん高すぎてもいけません。緊張をほぐす方法としては多様な手法がありますが比較的容易にできるものとして、腹式呼吸(息を吸いながら下腹部を膨らませ、さらに吸いながら胸も膨らませ十分吸ったところで数秒間息を止め、ゆっくりと口から息を吐いていく。この時、首から肩の緊張感も身体から抜け出て行くような感じを意識する)やゆっくりと腹部をなでることなどがあります。

Q2:レースの前日に寝付けないことがあります。次の日に万全の状態で臨みたいのですが、寝付きやすくする方法などはありませんか?

 寝室の温度、照明、寝具の硬さといった物理的な環境、入浴、ストレッチといった生理的側面などを考えて見る必要があるとは思いますが、ここでは心理的な側面について述べることにします。まず、寝付かれない原因として考えられるのはレースに対する不安があると思われますが、ベッドの中でレース中の自分のペースについてコースを含めメンタルリハーサルをしてみましょう。自分の走り方(レース運び)が確認できたら何も心配することはないでしょう。自分は走り通せるといった自信を確認し、後は好きな音楽(アップテンポでなく)を聴きながら眠りにつけるはずです。

Q3:レース中に気持ちが焦ったりすることがあるのですが、それを落ち着かせるコツなどはありますか?

 レース中意識を内面に向けると心臓の鼓動や脚部の筋肉の痛み、呼吸の乱れなどから焦りや完走できそうにないかも知れないといった不安感情に支配され、苦しさが倍加されます。自分のペースを守りつつ、周囲の風景や応援者、時には他の選手の息づかいなどの観察といった意識を外部に向けことも有効な方法です。また、最近ではシャツやパンツにお守りなどを縫い付けている選手を見かけますが、強く握りしめながら「大丈夫!今の自分のペースで良い!」など自分にフィットする言葉を口に出すことなどを進めます。

プロフィール

佐久間春夫(さくまはるお) 立命館大学スポーツ健康科学部教授。

専門分野はスポーツ心理学、精神生理学、健康心理学、スポーツ情報処理・統計。

東京教育大学、筑波大学体育科学研究科(博士過程)を経て、教員として東京都立大学、国士舘大学、奈良女子大学を経、2011年4月より現職。公認スポーツ指導者要請講習会(日本体育協会)、スポーツ振興(奈良県)、次世代育成支援協議会(奈良市)等に関わっている。